横浜に気をつけろ!

横浜美術館レクチャーホールにて、同期の卒業制作組4人の映画上映会。タイトルはやはりゴダールの『右側に気をつけろ!』からか(聞きそびれた)。4人とも想像以上の力作、内容も集まったお客さんも彼らの幅広い活動を象徴するかのような上映会でした。
個人的には渡辺智喜の『ハコ』を最も評価したい。60min弱の劇映画で、前半は親友同志の男2人のうち片方にはどうやら同棲していたらしい彼女がいて、その行方が分からないらしいという状況説明。後半は彼女の居所が明らかになり男2人でそこへ向かうというロードムーヴィー的進行。オチがあり彼女がいた男が実は親友の男に思いを寄せていたことが発覚するという悲劇=喜劇。
後半の説明的シークエンスに嫌味のない演出をもって悲劇と喜劇の絶妙なバランスを成立させた手腕もたいしたものだったが、こういった演出は彼の少し苦手とするところ(というか今回の挑戦が大胆)だったせいもあってか作品全体がうまくまとまっていない印象。ひとつひとつの試みが面白いだけにもったいない。
徹底的にすばらしいのは前半の演出。タイトル「ハコ」のイメージにつながる列車のコンテナや道路脇の物置、ダンボールなど象徴的なものをシークエンスにバランスよく取り込みつつ、ひとつひとつのカットもフレーミングから遠景・近景の使い分けまで絶妙。いちおう横浜が舞台ということですが、みなとみらい地区をはじめとするきらびやかで洗練された一般的なイメージとしての横浜ではなく、人工的・無機質でわびしい夜のリアルな横浜のイメージをしかし愛すべき眼差しで捉えることに成功している。車がまばらな夜の高速道路、決して広くない2車線の道路を不釣合いに多く行き来する車とバイク、小高い丘の上から見える貨物列車の発着所、それらを眺める男(しかし顔は写らない)。これらだけでは映画として成立しえないだろうが、一方でただ純粋に視覚的快楽を与えてくれたのも事実。