私たちの場所はどこ?/イリヤ&エミリア・カバコフ@森美術館

 個展というよりは展覧会の総体をもってひとつの作品と言える斬新な内容であり、楽しむことができた。森美で行われた展示の中で、今のところ最も評価したい展覧会である。
 チラシにも掲載された会場風景で最も目を引くのが、天井からつき出て立つ巨大な人間の足と、やはり一部(というか大部分)が天井の上に消え入ってしまっている壁面の巨大な絵画。通常我々が展覧会で用いる目線には、写真(あるいはデッサン)と散文が組になった平面がびっしりと並んでいる。会場で同時に2つの展覧会(しかも異なる時代)が行われているというコンセプトである。さらにカバコフらしく木板に覆われた床にはところどころ裂け目があり、目下に町の鳥瞰模型を認めることができる。3つの世界が同居しているということであり、観客もその一部として取り込まれていると考えることができる。
 この斬新なコンセプトは空間や時間の変化、相対性の中で常に評価が変わり続ける現代美術そのもののあり方を問うているようでもあり、過大解釈として、展覧会と同じく空間が縦の方向に展開している森美術館そのもののあり方すら問うているようでもある。