六本木クロッシング 2

再びバイト帰りに寄ってきました。個人会員に入っているので学生・アーティストは5000円、一般は8000円で年間フリーパスというのはうれしい。こうやって毎回ちびちびと見ていく予定です。
しかし「六本木クロッシング」ってタイトルは非常にうまいなと思いますね。六本木の多文化性と展覧会における多様性をうまく関連付けている。でも今回も思ったんだけどやっぱり徹底的にまとまりがない。それはもう「ハピネス」展の時の方がまだぜんぜん文脈があって楽しめたなと思い返すくらいで、今回の展示は「現代」と「日本」しか共通項がないのです。相変わらず作品を詰め込むだけ詰め込んでいるから空間も音響も侵食しまくりで正に混沌状況。そう、この6人のキュレーターによる展覧会は現代日本における美術の「混沌」状況を示すという意味では全くの成功しているのです。ただどちらかと言えば展覧会のストーリーを楽しみたい僕らとしては、個々の作品単位でしか全く楽しめないわけで。

エキソニモ《ナチュラル・プロセス》
googleを開いたブラウザのウインドウまでもが絵画になる時代になってしまった、というのは表面的な結果にすぎないが、この展示で面白いのは展示室にしかけられたウェブカムにより我々の姿とgoogleのウインドウ絵画が実際にインターネットに取り込まれてしまうという点だ。世界もデスクトップなのか。http://www.exonemo.com/exonemo/
西尾康之《メリーA》《メリーB》
ビル群の中に立ちはだかる巨人の女に旅客飛行機がたくさんぶつかっている。これはもちろんWTCが存在していたマンハッタンの街を想起させる。街から突き出る2本の足。私にとっては先日《リヴァイアサン》で耳にした東京都庁から突き出る2本の尖塔をも思い起こさせた。しかし女の足元を良く見れば、円筒形のビルが森ビルに見えないこともないではないか。
田中功起《トランクと血と光》
飛び散る鮮血とトランクの映像。恐ろしい殺人事件の類のイメージを想起させるが人間などは全く登場しない。にも関わらず強力なインパクトを生み出すことのできる彼の編集技術の巧みさには毎回舌を巻いてしまう。
ヤノベケンジ《森の映画館》《Tower of Life》
恐らくヤノベケンジが最もやりたかったのは《森の映画館》であろうが、《Tower of Life》の写真やドキュメント映像、オブジェなどの前置きがあって初めてこれは感動的なインスタレーションとなる。それにはちょっと今回の展示スペースは狭すぎた。ゆえに中途半端に終わっているのが惜しい。わずかうさんくささもあるがドキュメント映像がよくできていて、昨年国立国際美術館での個展に足を運べなかったことが悔やまれた。
八谷和彦《オープンスカイプロジェクト》
風の谷のナウシカ』に登場するグライダーを実機制作するプロジェクト。熊本での実験映像は見ていたのだけど、今回は外の見える展示室にその1/2モデルやコンセプトシート、ユニフォーム、体重計などを並べているのがいい。特に体重計は、見るものに対してリアルに「あなたは乗れますor乗れません」と問いかけてくるだけに(体重50kg以上は不可)このプロジェクトの実現性を象徴している。ちなみにご本人がid:hachiyaで日誌を書いていますね。松蔭浩之さんによる写真もいい感じ。http://www.petworks.co.jp/~hachiya/opensky/
中西夏之《地上30センチ》
昨年の東京芸術大学退官個展の際のリメイクのような作品。床に広げられた目の粗い白布には切り込みが入れられていて扉状に「自立」しているかのような(もちろん枠が入れてある)面の多い絵画作品。紫色の画材を使った大胆なペイントが施されてあり、床の布には白い粉の山や銀色の球が並べられています。「自立」部分は2箇所でしたが、そのうちひとつが固定されておらずゆっくりと回転しているのが印象的。1本のワイヤーで吊るされていて、床からちょっとだけ浮いているんです。最も静かであるにも関わらず、危うい魅力のあるインスタレーション
ニブロールドライフラワー
3面スクリーンのビデオインスタレーション。サイドの2面に群れをなす動物やダンスする人物のシルエットが白黒でプロジェクションされている。なんのことはないとデコレーションがしてある床を歩き回っていると、観客は中央のスクリーンに写る自分の影の中だけにサイドの映像と連続するイメージが写っていることに気づくだろう。ただしこれは正確には影ではなく、ライブカメラで写した我々の姿をシルエットとして抽出して映し出すシステムのようである。スケール感がうまく考慮されていて、自分の影をうまくスクリーンに映して動く動物の映像を捕まえたり、サイドのダンサーの映像を真似て自分も踊りたくなってくる。しかし偽物の影は自分の意志とは逆の動きをするのだ。一緒に鑑賞していた外国人の方々と、言語抜きでこの手軽だけども奥の深いインタラクションを楽しむことが出来たので人気投票(オーディエンス賞・会員賞)に選んでみた。