ロスト・イン・トランスレーション@新宿武蔵野館

 すっかり遅くなってしまいましたが、やっぱり気になる1本。シネマライズはあまり好きではないのであえて新宿まで。
 『ヴァージン・スーサイズ』もそうでしたが、ソフィア・コッポラの素直な語り口と鋭い感性は悪くないです。凡庸な評価!?しかしなんでしょう、バランスがいいんですよね。
 正に彼女自身の視点により描かれる、外国人から見た日本の奇妙さや魅力、また異文化交流の間で生まれるもの失われるものが時にはコミカルに、時にはシリアスに捉えられていて(それは正に「ロスト・イン・トランスレーション」のシーンに象徴的だったわけですが)、安心して見ることができました。
 ただこれは自分が日本人であり、東京で生活しているからこそ見出せた面白さなのかもしれないと思い、果たして映画作品としてどこまで評価していいものなのか頭を悩ますところ。
 うーん、やっぱり凡庸な感想になってしまった。。。

 飛ぶ夢を見た/野口里佳@原美術館

最終日、16時半という早すぎる最終入場時間にタクシーで駆け込む。見たことがあるものがほとんどとはいえ、原美の個性ある展示空間それぞれの中で展開されるシリーズ作品は、魅力を増して見えた。図録が会期中のみ1300円引きと格安で内容も良かったのだけど、装丁が気に入らなかったので買いとどまった。P3が出している「鳥をみる」も欲しいしなぁ。迷うところです。

 Video Art Screening:Tokyo@東京国際フォーラム

AIT小澤慶介さんの企画。今回はNICAFから独立しての開催です。テーマは「paradise views:楽園の果て」ということで、作家作品それぞれの世界観=楽園という単純な図式の裏に、ますます広がる世界資本主義化の害悪について考えさせられる各国からの出品。
自分の部屋で母親と電話をしている最中に突如「実は戦争に来ているんだ」と口で爆撃音を叫び始めもだえ始め、最後には息絶える(ふりをする)パフォーマンスを映像化した小泉明朗の作品などは、完成度が高かった。強度がある上に、世界状況を考えるとシチュエーションとしての可能性を完全に否定できないだけに、ただ笑い飛ばすことができない作品である。
元映像屋としては、山崎知佳子作品の拙さなどはどうしても気になるところだけど、他の作品もそれぞれ異なるアプローチがよく出ていて楽しむことができた。

 今週の出来事

3連休はいろいろ行きたいところがあったものの、仕事もあり結局横浜美術館とNIPAF、大学のプチ同窓会しか行くことができなかった。
パフォーマンスアートに興味を持つようになってからNIPAFのことはずっといろいろ聞いていたけど、今回はじめてこれを体験してまだまだどうなるか分からない分野だなと感じだ。良くも悪くも1日参加しただけでは消化不良。
大学の同窓会は、親しい友人を中心に集まっただけの飲み会だけども、夕方5時から翌5時まで延々と続き、結局20人以上集まった様子。自分は終電で仕事帰りからの参加だったのでこれまた消化不良。就職組(といっても2〜3割)は愚痴を並べつつも楽しそうな一方で、進学・フリー活動組ほど悩み多き印象。自分はどちらに近いだろうか。
連休明け、ABC倒産の件でうちの出版部門も大変なことになっているらしい。再建の署名運動メールなどがいろいろなところから届くけど、果たしてどれほどの効果が得られるものか信じがたい。
仕事が落ち着いてきたので、ギャラリーの宣伝も兼ねてメルマガを名乗った近況報告メールなどを知り合いに流してみる。ちょっとうるさいかなとも思ったけれども、それなりに好評なのでしばらく続けてみようと思う。希望の方、おっしゃってください。
週末土曜はSuper DeluxでAIT HOUR MUSEUM。仕事が終わってかららだったので1時間ちょっとしかいることができなかったけど、ご無沙汰していたAIT関係の人たちと会えたのが良かった。イベント自体も関係者パーティーっぽい雰囲気はなく、カジュアルに楽しむことができた。

 唐ゼミ公演「盲導犬」

 そんでもって夜は横浜沢渡公演にて唐ゼミ観劇。2回公演以降、ほとんどの公演を2〜3回づつ拝見してきたけども、さすがに今回は時間がつくれなくてこの日のみ。会場もキャストも変わる全6回だっただけに非常に残念。
 暑いテントの中で朦朧としながらでしたが、照明を浴びてさらに汗だくになってるなっている同輩たちを見ながら、制度化された社会の中で欲望のままに生きること/またその難しさ、について思いをめぐらせていました。
 大学を卒業した今ではここでいろんな人と再会できるのも楽しみで、横トリの時もお世話になった椿昇さんに会えたのもうれしかった。はてなblog発見id:unboy

 ノンセクト・ラディカル:現代の写真3@横浜美術館

 この日横浜美術館は企画展が初日+高嶺格さんのトーク、アートギャラリーもナジデダ・オレック・リャホヴァ展のオープニング+パフォーマンス、土曜日恒例のギャラリーコンサートといつになく賑やかな雰囲気。ロビーでは開館15周年企画として過去企画展のポスター展なども行われています。就職の挨拶もそこそこになぜか椅子並べを手伝いつつ、目的の高嶺さんトーク。といっても今回はかなりイレギュラーで、展示室で公開見合わせとなった映像(パフォーマンス記録)が修正バージョン、映像に出てくる「木村さん」と高嶺さんのパフォーマンスつきで上映されました。
 ご存知の方も多いとは思いますが、この映像(作品)は身体の自由が利かない障害者(木村さん)のマスターベーションを高嶺さんが手伝う「性の介護」の様子が写されたもので、作品としてこういったものが存在しうることに対する賛否両論があり、観る人(例えば関係者)によっては著しい不快感を与えるものになりうるし、単純に性器の描写についての問題などがあります。
 外郭団体として横浜市の方針に経営が左右される横浜美術館がこのような作品を「展示しようとした」ことにはある種の魂を感じます。もちろん年齢制限だとか時間制限などで「見たくない人は見ないで済む」方法を考えていたとのことですが、この日のトークにはやはり観たい人ばかりが集まっていたわけで、高嶺さんから長い解説があった後に、未修正バージョンを観たいかどうかなどの意見が観客にも求められていました。少なくとも自分はこれを見ることができてよかった。感動しました。
 展示の方は駆け足になってしまいましたが、「ノンセクト・ラディカル」って言葉は写真表現の硬質な文脈になかなか合いますね。もちろんすべての美術作品に対して適用できる切り口ではあると思いますが。霜口啓二とか好きかもしれない。

 鉄割アルバトロスケット@宮永会館

越後妻有で見逃した鉄割公演をついに拝見。当日1500円だんご付でお買い得。
1部は『ゴドーを待ちながら』を原型がとどまらないほどに脚色した『大根+1』。役者のキャラクターが引き立つ絶妙の演出。2部は漫才か余興かパフォーマンスか、体を張った1発芸や台詞の言い回しが勝負の、いわゆるカジュアルな意味での「シュール」な演目が続く。
どちらとも1歩間違うとサムくなるネタが満載でしたが、お金をかけなくてもアイデアだけでこれだけ面白いことができるんだというパワーを非常に感じさせられた2時間でした。先日フタバ画廊でパフォーマンスをしていたkiiiiiiiのメンバーの方や渋さ知らズのボーカルの方などが参加していたのにも驚き。